【インタビュー記事】Ocean at Risk 04「津波」丹羽淑博
南海トラフ地震で30m超の津波が発生する!? 発生と予測のメカニズムから最善策を
2011年3月11日の東日本大震災では東北地方を中心に、津波による甚大な被害が発生した。南海トラフ地震にともなう津波の危険性が指摘されるなか、海洋物理学は津波のメカニズムの根本に迫ることで、その予測や対策に生かせる知見を与えてくれる。
津波はどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。
丹羽淑博|よく知られているように大部分の津波は地震に伴って発生します。より正確に言うと、地震を引き起こす断層運動(断層のズレなど)によって海底が広い範囲にわたって隆起すると、それとほぼ同じ形で海面が隆起し、それが波として伝播する現象が津波です。そのため、地震が起きても断層が横ズレの場合は大きな津波は発生しません。縦ズレ断層の場合に注意する必要があります。
さらに、津波には水深が深ければ深いほど、伝播するスピードが速くなるという性質があります。そのため、津波の伝播速度は陸地に近づくにつれて減速し、そこに後方部の波が追いつくことでさらに大きくなっていくのです。なお、「津波が発生すると漁師は船を沖に出す」という話がありますが、それは沖合に行けば津波の波高がなだらかで流れが弱くなり、安全だからです(伝播速度は沖合ほど大きくなるが、津波による流れは遅くなる)。 ただし、タイミングを誤ると津波に飲まれてしまう恐れもあるので、かならずしもこの選択が正しいとはいえません。
津波の予測はどのように行われるのでしょうか。
丹羽|日本は四方を海に囲まれた島国で、太平洋プレートやフィリピン海プレートなど四つのプレートの上に乗っており、大規模な津波を引き起こすプレート境界断層に囲まれています。津波発生源が近くにあるため、地震が発生してからその都度、全国各地の津波の高さや到着時間を計算していたのでは間に合いません。そこで、気象庁では事前に想定しうる断層ごとに約10 万ケースの津波の数値シミュレーションを行い、その計算結果を津波予報データベースとして蓄積しています。地震が発生したら震源位置やマグニチュードを推定し、それにもっとも近いケースの計算結果をデータベースから選んできて津波予報を発表します。地震発生から3分以内に津波予報の第一報を出すことになっています。さらに、地震発生から10〜15分たってより多くの地震データが集まってくると、断層運動が縦ズレか横ズレかといった情報もわかってくるので、それらをもとにより正確な津波予報を発表します。
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